東洋医学の基礎知識

ペットの下痢、東洋医学的にはどう治療する?

みなさん、こんにちは!ペット専門鍼灸師の吉岡奈緒美です。

最近、なぜだかおなかの調子が良くない私…。

実は、昔からお腹が弱く、冷たいものを食べたり、朝から牛乳やヨーグルトを食べるとお腹が痛くなったりしていました。

最近急に寒くなったりして、私のお腹も負担を感じているようです(-_-;)

ということで、せっかくなので(?)今日は、東洋医学的にみた下痢についてお話してみたいと思います♪

 

下痢の治療のポイント!寒熱を見極めよう。

 

下痢のことを中医学では泄瀉(せっしゃ)といいます。病態は大きく急性と慢性の下痢に分けられます。

 

急性:飲みすぎ、食べ過ぎ、外邪の侵入などにより気の流れが阻滞。そして食べたものを分別できず消化不良により下痢

 

慢性:脾胃の虚弱体質や、慢性病による気虚など、気不足により消化が進まず下痢

 

病因がどちらであれ、大事なのはその下痢が寒(冷え)の性質を持っているか、熱の性質を持っているかを見極めることです。

 

なぜならそれによって、治療法が違ってくるからです!!

 

 

どうやって寒熱を見極めればいいの?

わかりやすいように表にまとめてみました!

 

寒/熱 しぶり 臭い 性質 その他
なし ちょっと臭い 水っぽくて薄い あったかいところを好む
あり かなり臭い 黄濁粘稠 涼しいところを好む

 

 

と、大まかにはこんな感じで寒熱どちらに偏っているか確認していきます。

 

さらに、診察の時は脈や舌の色なども診て、総合的に判断していきます。

 

簡単に言うと、

脈は寒では遅くなるし、逆に熱の時は早くなります。

舌の色は寒では薄く熱では紅くなります。

 

上記の表のような特徴はお家でも確認できるので、ペットちゃんが下痢をした場合はまず、その性質や臭いを観察して、寒熱の予想をしてみるといいですよ。

 

基本的に、熱の下痢の場合は、たまった湿熱を排泄させることが治療になるので、下痢も出し切った方がすっきりしたりします。鍼も瀉法(気を抜いたり、流れを促したりする)をメインで使います。

 

逆に、冷えの下痢の場合は、補法(気を増す)や灸法を使い、漢方も補い・温める処方を選択します。

 

使うツボは同じでも、その子の状態によって、補/瀉を変える必要があるため、便の性状などによる寒熱の鑑別が大切になってくるのです!

 

 

下痢を引き起こす根本原因を探る!どの臓腑が原因なの?

寒熱の分類という第一段階が終わったら、次は、原因をもっと深く考えていきます。

 

 

それには、まず、消化にどんな臓腑がかかわっているかを理解することがとても大切になってきます。

 

中医学において、消化は胃腸だけの働きでは成立しません。

臓腑が様々な形で関わり合っており、協調しながら行っています。

 

出演者

主演

:運化昇清(消化吸収し、必要なものを上へ輸送する)

:水穀の受納と腐熟(食べ物を貯めてドロドロの半液体にする)

小腸:泌別清濁(胃から来たものをさらに分別)

大腸:小腸で分別されたものから水分を吸収して便として排泄

 

助演

:疏泄(気の流れを調整、脾胃の働きを調整、感情の調整)

:蔵精(生命のエネルギー源!脾を温め、消化作用を主っている)

 

消化の主役は脾ですが、脾は、肝と腎によってコントロールされているので、脾気を高めるには肝腎の調整も必須になってきます。

 

なので、下痢の治療といっても、肝の気を流したり、腎の気を足さないとよくならないということもあるのです。

 

どの臓腑が原因になっているかは、飼い主さんからお話を聞いたり、脈診、舌診、眼診などから情報を集めて探っていきます。

 

そして、トータルで考えて、どのツボを使っていったらいいのかを決めていきます。

 

ストレスで下痢・・・どうして起こるの?

動物たちも日々いろいろなストレスにさらされています。そしてそのストレスが、下痢の原因になることも多々あります。

 

例えば、

・ホテルに預けてから下痢している

・孫が遊びに来て、大騒ぎした日から下痢している

・大好きだった娘さんが家を出てから、お腹の調子を壊すようになった

 

などなど、どれも診察しているとよく聞く話です。

 

では、この時、身体ではどんなことが起こっているのでしょうか?

 

ストレスは肝に一番影響を与えます。

 

肝はのびのびしたい性質の持ち主です。

 

なので、ストレスが加わることによって鬱々としてくると、だんだん熱を溜めていきます。そしてその熱が持続・増加していくと・・・脾に熱が伝わっていくのです。そして下痢が起こります。

 

これが“肝鬱困脾”といわれる神経性下痢の病態です。

 

この時、脈を触ると「弦」という硬い脈になって、熱がこもっているので舌の色は赤みを増し、便は黄色味がかった未消化の便臭になることが多いです。

 

ストレスで肝の気が阻滞していることが原因なので、こんな時はとにかく疏肝(肝気を流すこと)が大切!!

 

漢方も抑肝散加陳皮半夏や柴苓湯(小柴胡湯+五苓散)など肝気の流れを整える力があるものを使っていきます。

 

 

高齢による下痢…なぜ起こるの?

まず、高齢になっていくにつれて、身体の気にどんな変化が起こるかをお話ししたいと思います。

 

腎臓には先天の気が蓄えられており、生まれた瞬間がMaxで、あとは年齢とともに減り続けていきます。・・・悲しいですね。

 

じゃあ、気は無くなる一方なの?

 

というとそんなことは無くて、ちゃんと後天の気として補うことができます。

そう!食べたものから気を作っていきます。

 

そして、その「気を作る工場」こそが「脾胃」なのです。

 

大事なのは、脾の活動エネルギーは、腎臓の陽気が支えているということです。

(“腎陽が脾陽を温める”と言ったりします。)

 

 

なので、高齢になると、生命の根源の気も衰えるし(腎虚)、気も作れなくなるし(脾気虚)、身体が冷えやすくなります。

 

さらに、久病入腎といって、慢性の疾患では必ず腎気が損耗してきます。

高齢になればなるほど、色んな病気が顔を出してきくるものなので、さらに腎気は少なくなってしまうのです。

 

よって、高齢の子は冷えの強い下痢をすることが多いです。

なので、治療はとにかくあっためることが大事!体の内側を温める生薬を使った、人参湯などが著効することが多いです。

 

どんなに健康に生きていたとしても、腎気は衰えていきます。

腎気を補うことがどれほど大切か…わかりますね!

 

 

そして、最後に朗報です!!

 

減る一方だった先天の気ですが、なんと、お灸で補うことが可能です!!

 

お灸は気を足す処置です。

 

そのお灸を、腎兪、命門、関元といった要穴に施すことによって先天の火を補えるのです!

 

どんなことにも共通ですが、気の調節をすることが中医学的治療では大切になってきます。

 

気不足に大事なのは、食べることと、お灸です。

(もちろん鍼もかなりの効果がありますが)

ぜひ、ご自宅でのお灸も試してみてくださいね♪

 

そして、消化器疾患の子には、マコモを飲ませてあげることもかなりお勧めです!!

マコモについては、また別の機会に詳しくお伝えしたいと思います!

 

 

 

 

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